画像出典:刀剣乱舞(とうらぶ) – 公式 –
「刀剣乱舞ONLINE」では、11/28からイベント「秘宝の里~楽器集めの段~」が始まりました。
秘宝の里イベントは、マップを回りながら花札をめくって秘宝の玉を集めるという内容。
プレイヤー間では玉集めの通称で知られたイベントで、通例通り今回もランニング報酬で新刀剣男士を迎えることができます。
「楽器集めの段」と付いている今回のイベントは、玉だけではなく、敵札の時と最終ボス戦で落ちる5種類の楽器も集めるというもの。
この楽器で何をするかというと、刀剣男士の「近侍曲」という第一部隊長に指定した時、本丸で流れる曲が交換できるんです。
近侍曲は「楽器集めの段」が開催される度に追加されていますが、今回追加されたのは2曲。
短刀の「今剣」、「後藤藤四郎」の2人の曲です。
この2振りの共通点は短刀であることと、キャラクターデザインが大人気イラストレーター「しきみ」さんの作品であることの2つが挙げられますね。
2人ともとても可愛いイラストで、私はしきみさんの描いた「今剣」を見てゲームを続けることを決めました。
なかでも「今剣」は、ミュージカル刀剣乱舞にも登場する人気キャラクターの1人です。
ここではイベント開催にちなんで、「今剣(いまのつるぎ)」の魅力についてたっぷり語りますね!
刀剣乱舞の「今剣」はどんなキャラクターなのか?
イラストからすでに可愛さ満点の今剣ですが、ゲームの中ではどんなキャラクターなのでしょうか?
まずは、実際に参考にされた史実や関係のある刀と一緒に、キャラクター性についてご紹介します。
源義経が持っていたとされる伝説の短刀
今剣は、源義経が使っていたとされる守り刀がモデルになったキャラクターです。
この刀は、「義経紀」という源義経にまつわる逸話をまとめた書物のなかで「三条宗近の作」と明記されていたため、刀派は「三条派」になっています。
三条派といえば、ゲームの顔役ともいえる「三日月宗近」は三条宗近の打った刀ですね。
今剣は現代には残っていないので、本当に存在したのか、本当に三条宗近が打った刀なのかは定かではありません。
義経紀では「義経が自刃(自害)の際用いた守り刀」として記述されており、本人も「源義経の最期の時まで傍に居た」と語っています。
最期まで一緒に居られたことを誇らしく思う反面、大事な主人が息絶えるところを一番近くで見届けなければいけない悲しみもあったようです。
今剣自身が自分の使われ方に複雑な思いを抱いている様子は、ゲーム内のみならず、アニメやミュージカルでも丁寧に描かれました。
薙刀・岩融とは既知として描かれる
岩融(いわとおし)は、どのメディアミックスでも必ず今剣とセットで描かれるキャラクターです。
岩融も伝説で一躍有名となった薙刀で、源義経の家臣、武蔵坊弁慶の薙刀がモデルになっていますね。
源義経と武蔵坊弁慶といえば、五条の橋の上で1戦交えたあとは死ぬまで共に生きた2人です。
史実の源義経と武蔵坊弁慶のように、今剣と岩融もいつも一緒に行動しています。
実装されている刀剣男士でも一二を争う巨体の岩融と、短刀の中でも小柄な今剣との組み合わせは、微笑ましく映りますね。
無邪気でかわいい天狗
今となっては彼1人の特権ではなくなってしまったのですが、今剣は実装されているセリフが全て「ひらがな」という結構特徴的な刀です。
幼い容姿も相まって可愛らしいですね。
源義経の伝説の1つに、「鞍馬の烏天狗に育てられた」というエピソードがあります。
その影響を強く受けたのか、今剣も軽い身のこなしで、「とんだりはねたりおてのもの」と自己申告してくるほど身体能力が高い描写が多いです。
ステータスでも機動や偵察の値が高めに設定されており、バランス感覚抜群という設定が反映されています。まさに小天狗ですね。
「今剣」は実在したのか?
「源義経が自刃で使った刀」として名を馳せた今剣ですが、2018年時点で、今剣という刀が現存しているという記録はありません。
現代どころか、「義経紀」での記述以外では今剣についての情報は一切ないのが現状です。
ゆえに、架空の創作物であるという説もかつては存在していました。
それでは、今剣は実在したのでしょうか?それとも、実在していないのでしょうか?
原作ゲーム・ミュージカル・現代資料の3つの視点から、今剣の実在に関する情報を拾っていきましょう。
原作ゲームの見解は「実在しない」
今剣にもレベルキャップ解放「極」が実装されました。
そのため、今剣は修行に出て自分の過去と向き合うことになります。
もちろん、彼が向かうのは平安時代、源義経が生きている時代ですね。
修行先で、今剣は源義経の最期を再び見届けることになります。
これだけでも、彼の旅路が過酷なものであることが想像できてしまいますよね。
今剣の手紙には、その時の様子が書き綴られています。彼は、困惑した様子でプレイヤーに手紙を送ってきました。
「義経公はぼくを持っていない」
ゲームの中での歴史で、今剣は一度も出てきませんでした。つまり、ゲームで描かれる世界の歴史には、今剣は存在しないのです。
今剣は「義経紀」だけの創作物というのが、ゲームが示した結論でした。
架空の刀であることを知ってしまった彼は、「プレイヤーだけの守り刀」として帰ってきて、プレイヤーのために戦うことを誓ってくれます。
私は最初、今剣の決意が痛々しすぎて、修行に出して本当によかったのか考えすぎて寝込みました。
ミュージカルの見解は「実在している」
ミュージカル刀剣乱舞の第1段「阿津賀志山異聞」は今剣と岩融の過去、つまり源義経と武蔵坊弁慶にスポットを当てたストーリーが展開されました。
ミュージカルでは、冒頭からたしかに源義経は短刀を使い自刃しており、その場に居る今剣の回想で始まります。
遡った歴史の中でも、源義経は「今剣」と思しき短刀を手に持ち、喉元に短刀を当てて自刃する様が描かれました。
歴史修正主義者の差金で生き延びようとする源義経を「元の歴史通りにする」ために、刀剣男士は戦います。
今剣は「どうして義経公を助けてはいけないの?」「義経公を助けたい」と、歴史を守ろうとする仲間から必死に源義経を守ろうとしたりして、とにかく涙なしには観ることができない重厚なストーリーでした。
ミュージカル刀剣乱舞では一貫して、「今剣」と「岩融」は実存した前提で話が進んでいきます。
「今剣」の過去を描写した刀剣乱舞の作品は、ミュージカル刀剣乱舞が最初でした。
「極」修行の手紙はそれから1年ほど経過してからの実装だったので、ミュージカルとの矛盾が議論を呼んだのです。
「今剣」と同じ銘が刻まれた「ほうき星宗近」
2016年には、青森県八戸市で発見された「三条派」とみられる刀に、今剣として語り継がれている守り刀と同じ銘があるとのことで、大きな話題になりました。
デーリー東北の「天鐘」というコーナーで取り上げられたこの短刀ですが、「今剣」であるかどうかは判明しておらず、この短刀は「ほうき星宗近」と命名されて今も保管されています。
銘が偽造ではないということが判明した時点からの鑑定は、現在もされていません。
刀剣乱舞で大きく話題に取り上げられている最中にこういう発見があると、燭台切光忠の時と同じくロマンを感じてしまいますよね。
このことから、「ほうき星宗近」がもし「今剣」であれば現存確定なのですが、「ほうき星宗近」の鑑定は行われていないので、今剣に関係するかどうかは不明という扱いになります。
原作とミュージカルの矛盾を紐解く鍵は「舞台刀剣乱舞」と「聚落第」
ゲームでは「存在しない」、ミュージカルでは「存在している」と公式が2つの解釈で真っ二つに割れた「今剣」。
ゲームからスタートしたコンテンツである「刀剣乱舞」から見れば、ミュージカル刀剣乱舞はある種の二次創作です。
とはいえ、原作が監修しているいわゆる「公式二次創作」になるので、完全に設定を無視するというのはどうなのでしょうか。
原作側はストーリーを知った上で、ミュージカル刀剣乱舞にゴーサインを出したわけですから、もしゲームと設定の矛盾があるなら、訂正が入ってもおかしくありませんよね。
それでは、ミュージカルとゲームの設定は矛盾しているのに、なぜそのまま制作されたのでしょうか?
その答えに辿り着く鍵は、「舞台刀剣乱舞」と「特命調査 聚落第」にて語られた設定に隠されています。
この「鍵」から、今剣の設定はどのように解釈するのが正解なのかについて、考察していきましょう。
公式二次創作でも必ず守られている設定「プレイヤーの数だけ本丸がある」
刀剣乱舞のメディアミックスは、2018年現在で5つです。
- 「刀剣乱舞ONLINE(原作ゲーム)」
- 「ミュージカル刀剣乱舞」
- 「舞台刀剣乱舞」
- 「アニメ「刀剣乱舞・花丸」」
- 「アニメ「活劇/刀剣乱舞」」
このメディアミックスでは、それぞれ別の世界観で物語が展開していきます。
刀剣男士の細かい性格や本丸での関係性、起こる出来事から審神者の設定まで、全て作品ごとにバラバラ。
なかでも、「審神者」と呼ばれるゲームでいうところの「プレイヤー」にあたる設定のばらつきは、特に顕著ですね。
例えば、ミュージカル刀剣乱舞では「声のみ」出演、舞台刀剣乱舞では一切顔も声も出さないが近侍である「三日月宗近」の口から、「病に臥せっている」と言及されています。
アニメ「刀剣乱舞・花丸」では「部屋に引きこもって一切出てこないため、あまり顔を合わせないが「優しいひと」」となっており、人物として具体性を持っていました。
「活劇/刀剣乱舞」では、きちんと顔や声・服装まで細かくキャラクターとして作り込まれており、活劇の審神者は刀剣男士たちと同じく時間軸を飛ぶなど、特殊能力も披露しています。
刀剣乱舞では、サービス開始当初から「プレイヤーの数だけ本丸がある」という設定を大切にして展開されてきました。
これらの展開の仕方からも、公式メディアミックスであってもこの設定を守って制作されているということがわかります。
「悲伝 結いの目の不如帰」三日月宗近が語る「歴史改変を食い止められなかった世界」
舞台刀剣乱舞は、いわゆる「ループもの」の構造を取っている作品です。
気が遠くなるような回数、時間軸をループしているのは、この本丸の中心人物「三日月宗近」であったことが、第3作目「悲伝結いの目の不如帰(ほととぎす)」で明らかにされました。
この三日月宗近が繰り返し見てきた本丸の運命は、「壊滅」という非常に厳しいものです。
歴史修正主義者が本丸の場所を捕捉し、舞台刀剣乱舞の主役たちが所属している本丸は、何度も窮地に陥ることになるんですよ。
私は三日月宗近の独白を聞きながら、
- 「本丸が危ないなら、他の本丸から救援が来たりしないのかな?」
- 「本丸が1つ潰れたら、他の本丸の負担が増えるのかな」
と考えていました。
ところが、三日月宗近が語った「本丸が失われた世界」は私の予想とは全く違うものだったんです。
舞台刀剣乱舞で彼の口から語られたこの世界の未来は、「消える」というシンプルで残酷なものでした。
本丸が壊滅すると、歴史修正主義者に歴史を変えられたまま、戻すことができなくなってしまう。
つまり、敵である歴史修正主義者に敗北してしまうことになるんですね。すると、時間軸は政府が「時間軸ごと廃棄」するのだそう。
この設定が意味しているのは、多くのプレイヤーが1つの歴史を守っているのではなく、プレイヤーそれぞれがそれぞれの配属された歴史を守っているということなんです。
「プレイヤーの数だけ本丸がある」
というのは、二次創作を活発にするための優しいルールであると同時に、この世界を紐解くために存在する、重大な設定である可能性がここに示されました。
つまり、アニメ・ミュージカル・舞台・ゲーム、このどの作品の本丸も、同じ歴史ではなく、並行世界の話である可能性が浮上してきたんです。
「特命調査 聚落第」で決定づけられた別世界線の設定
当初は、舞台刀剣乱舞でしか「時間軸を廃棄する」というハードな設定は出てこなかったので、舞台だけの独自設定かもしれないと思われていました。
ところが、この並行世界の話が原作ゲームでもついに現れたんです。
それが、山姥切長義が実装された新イベント「特命調査 聚落第」。
このイベントは、導入でプレイヤーに対して「「廃棄された時間軸」を調査するように」と時の政府から命じられます。
この「廃棄された時間軸」というのは、歴史改変が食い止められずに政府から見捨てられた並行世界で、「歴史修正主義者の力が強すぎるために、今まで放って置かれた時間軸」と解釈されているものです。
なので、ゲーム世界でも無数に存在するプレイヤーごとの本丸は同じく並行世界で異なっていて、全く別の「歴史」をそれぞれ守っているものと思われます。
この設定から考えられる「今剣」の解釈
様々な展開から、新たな側面が見えてくる刀剣乱舞の世界。
それではこの世界観の設定は、「今剣」の解釈にどのような影響を与えるのでしょうか?
もう一度、「今剣」の存在について、各メディアでの扱いを復習しましょう。
①原作ゲームのプレイヤーが守っている時代では「今剣」は実在しなかった
②ミュージカルの主人公である審神者が守っている時代では「今剣」は実在した
①と②は矛盾した設定ですが、「刀剣乱舞」の世界では、原作ゲームの本丸とミュージカルの本丸は「別の歴史」を守っていることがわかりましたよね。
この「並行世界の」設定があることで、無数の時間軸にある、無数の歴史の中で「今剣」は「存在している」し、「存在していない」という、両方の歴史が存在していることがわかります。
どの世界でも共通して担保されているのは、「義経紀に出てくる、自刃に使われた刀の名前は「今剣」」というそれだけの事実だけなんです。
【まとめ】受け止め方はあなた次第!本丸に「今剣」は居る
少し説明がややこしくなってしまいましたが、「今剣」の設定に対する謎を中心にして「今剣」をご紹介しました。
あなたは「今剣」は存在したと思いますか?本当は存在していなかったと思いますか?
刀剣乱舞は、どちらの解釈を採用しても成立するように作り込まれた世界です。
確かなのは、「義経紀」に出てくる源義経の守り刀が「今剣」であるということと、あなたの本丸に居る小天狗が「あなただけの守り刀」ということだけと言えるでしょう。
可愛いなかに切ない過去と、ミステリアスな側面を併せ持つ魅惑の短刀「今剣」。ぜひかわいがってあげてくださいね。